
利益率の計算方法|中小企業の経営判断を変える5つの利益指標の使い分け
「利益率を計算してみたら、思っていたほど残っていなかった」——そんな経験はないでしょうか。式自体はシンプルでも、どの利益を分子に置くかで数字の意味が大きく変わります。
結論から言うと、利益率の基本式は「利益÷売上×100」で、分子となる利益は売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益の5種類あります。中小企業の日常判断で使うのは、このうち売上総利益率(粗利率)と営業利益率の2つで十分です。本記事では5つの利益率の計算方法と使い分け、業種別の目安、経営判断に落とし込む3つの場面、そしてよくある誤解と失敗までを、経営者の目線で順に整理します。
利益率とは|「どの利益を売上で割るか」で意味が変わる
利益率とは、売上に対して利益がどれだけ残ったかを示す指標です。基本式は「利益÷売上×100」で、単位は%。ただし分子に置く「利益」が損益計算書上で5種類に分かれるため、同じ会社でも利益率は複数存在します。
まずは5つの利益の違いを押さえ、自社の意思決定に使う指標を一つ選ぶところから始めます。全部を同時に追う必要はありません。
利益率の基本式は「利益÷売上×100」
計算式そのものは中学生の算数と同じ水準です。売上1,000万円に対して利益が200万円なら、利益率は20%。難しいのは式ではなく、分子の「利益」をどう取るかの選び方です。
分母を売上ではなく「原価」や「仕入値」に取ると、意味がまったく変わります。これが後述する「利益率と掛け率の混同」の正体で、中小企業の値付けで最も多い誤解につながっています。
利益には5種類ある
損益計算書を上から順に読むと、売上の下に売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益が並びます。この順番は、本業の稼ぎから徐々に本業外の損益や税金を差し引いていく流れを表しています。
5つは独立した指標ではなく、1本の階段でつながっています。したがって「どこの階段の数字を見るか」が、そのまま「何を判断したいか」とひも付きます。
「粗利率」と「利益率」の呼び分けで迷わない
実務で最も混乱しやすいのが「粗利率」と「利益率」の呼び分けです。粗利率は売上総利益率の俗称で、小売業・飲食業・卸売業では「粗利」のほうが日常用語として通じます。
一方「利益率」と単独で言われたときは、話者によって営業利益率・経常利益率・当期純利益率のいずれを指すかが違います。社内で指標を揃えるときは、必ず「何の利益率か」を明示するところから始めるとよいでしょう。
損益計算書の階段|5つの利益と利益率が示すもの
上から順に売上原価・販管費・営業外損益・特別損益・税金を差し引く
スタート
売上高
お客様から受け取った金額の合計
利益①
売上総利益(粗利)
本業の商品力=粗利率で見る
利益②
営業利益
本業全体の収益力=営業利益率で見る
利益③
経常利益
本業+財務=金融機関対応で見る
利益④
税引前当期純利益
臨時損益を加減した税引前の利益
利益⑤
当期純利益
最終手残り=株主への最終的な儲け
5つの利益率の計算方法と使い分け
5つの利益率は、損益計算書を上から下に読む順番で理解するのが近道です。経営者が日常的に使うのは上段の2つ(売上総利益率・営業利益率)で、下段の3つは金融機関対応や税務の局面で意味を持ちます。
ここでは計算式と使い分けを、判断用途とセットで整理します。
売上総利益率(粗利率)=(売上-売上原価)÷売上×100
商品・サービスそのものの稼ぐ力を示す指標です。売上から売上原価(仕入値・材料費・外注加工費など、売上を立てるために直接要したコスト)を引いた売上総利益を、売上で割って求めます。
粗利率が高いほど「1円売ったときに手元に残る原資」が大きく、そこから人件費・家賃・広告費などの販管費を支払う余力があります。粗利率が20%の会社と60%の会社では、同じ売上でも使える経営資源が3倍違うという解釈です。業種を超えて高粗利率を実現してきた経営の設計例としては、未来工業のビジネスモデル|休日140日で営業利益率14.7%も参考になります。
弥生公式の経営者向け解説動画「経営者は売上よりも粗利を追求せよ!」(YouTube・8.7万回視聴)でも、売上目標ではなく粗利目標で経営を回す重要性が繰り返し語られています。
営業利益率=営業利益÷売上×100
本業全体の収益力を示す指標です。売上総利益からさらに販管費を引いて算出する営業利益を、売上で割って求めます。粗利率が商品の力なら、営業利益率は「商品の力+その会社の経費構造」を合算した数字です。
粗利率が高くても販管費を使いすぎれば営業利益率は沈み、逆に粗利率が低くても販管費を薄く抑えれば営業利益率は守れます。業種が同じ会社同士を比較するときは、営業利益率で見るのが最もフェアです。
経常利益率=経常利益÷売上×100
本業に、支払利息・受取利息・為替差損益など営業外の経常的な損益を加減した経常利益を、売上で割って求めます。借入が多い会社は支払利息の分だけ経常利益率が営業利益率より下がり、金融資産を持つ会社では逆のことが起きます。
金融機関が決算書を読むとき、営業利益率と経常利益率の差を見て「本業の稼ぎで借入コストを賄えているか」を判断します。借入をしている中小企業は、この2つの差分も自分で把握しておくことを推奨します。
税引前当期純利益率と当期純利益率の違い
税引前当期純利益は、経常利益に特別損益(固定資産売却益・損失、災害損失など、その期にだけ発生する臨時損益)を加減した数字です。これを売上で割ると税引前当期純利益率になります。
ここからさらに法人税等を差し引いた最後の数字が当期純利益で、売上で割れば当期純利益率。株主に対する最終的な儲けを示す指標で、上場会社では投資家が最も重視しますが、中小企業の日常判断では使う場面は限られます。
5つの利益率|計算式と中小企業経営者の日常活用度
◎=毎月見る/○=四半期・年次で見る/△=金融機関・税務の局面で使う
| 指標名 | 計算式 | 示す意味 | 日常で見る? |
|---|---|---|---|
| 売上総利益率(粗利率) | (売上 − 売上原価) ÷ 売上 × 100 | 商品・サービスそのものの稼ぐ力 | ◎ |
| 営業利益率 | 営業利益 ÷ 売上 × 100 | 本業全体の収益力(商品力+経費構造) | ◎ |
| 経常利益率 | 経常利益 ÷ 売上 × 100 | 本業+財務の収益力(支払利息を含む) | ○ |
| 税引前当期純利益率 | 税引前当期純利益 ÷ 売上 × 100 | 特別損益を含む税引前の利益割合 | △ |
| 当期純利益率 | 当期純利益 ÷ 売上 × 100 | 最終手残り。株主にとっての儲け | ○ |
業種別の利益率の目安|自社の数字と比べる軸
利益率は業種によって「正常値」が大きく違います。製造業で粗利率20%は健全、サービス業で粗利率20%は赤信号——同じ数字でも意味が逆です。全業種平均と自社を比べても経営判断にはつながらないので、必ず業種を揃えて比較します。
ここでは中小企業庁「中小企業実態基本調査」の数値をもとに、代表的な業種の目安を押さえます。
製造業・卸売業・小売業・サービス業の目安
直近公表の中小企業実態基本調査(令和5年確報、2024年公表)によれば、法人企業の売上高営業利益率は、建設業で4.6%、製造業で4.3%、卸売業で2.2%、小売業で1.9%、宿泊業・飲食サービス業で3.1%、学術研究・専門技術サービス業で7.6%です。
売上総利益率(粗利率)で見ると、物販系(卸売・小売)は仕入値の存在で粗利率が低く出やすく、サービス業は仕入値がない分だけ粗利率が高く出やすいという構造があります。同じ「利益率」という言葉でも、業種を間違えて比較すると判断を誤ります。
| 業種 | 売上高営業利益率 | 特徴 |
|---|---|---|
| 建設業 | 4.6% | 案件単位で粗利が振れやすい |
| 製造業 | 4.3% | 材料費比率で粗利が決まる |
| 卸売業 | 2.2% | 薄利多売・在庫回転が肝 |
| 小売業 | 1.9% | 粗利率は中程度・販管費が重い |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 3.1% | 人件費・家賃比率が高い |
| 学術研究・専門技術サービス業 | 7.6% | 仕入値が少なく粗利が厚い |
※出典:中小企業庁「中小企業実態基本調査(令和5年確報)」2024年公表の法人企業・産業別データより抜粋
飲食店の利益率が低い構造的理由
飲食店の営業利益率が1桁前半にとどまる理由は、FL比率(食材費Food+人件費Labor)が売上の60%前後を占める構造にあります。残り40%で家賃・水道光熱費・減価償却・雑費・経営者の報酬をすべて賄うため、営業利益率10%は飲食業の世界では「かなりの優良店」です。
テンポス公式の飲食店経営者向け動画「飲食店の利益率の計算方法をわかりやすく!」(YouTube)でも、FL比率を60%以下に抑えることが黒字飲食店の最低条件として語られています。
同業他社比較より「自社の時系列比較」を優先する
業種平均は「異常値ではないか」の確認用途に留め、改善の目標は自社の時系列比較で設定することを推奨します。同業でも立地・顧客層・商品構成で正常値は変わるため、他社平均を無理に追うと値下げ競争に巻き込まれやすくなります。
まずは直近3〜5期の自社の粗利率・営業利益率を並べ、トレンドが上向きか下向きかを確認してください。下がっているなら、原価が上がったのか、販売価格が据え置かれたのか、商品ミックスが変わったのかを分解していきます。自社の商品ミックスを垂直統合で変え続けて36期連続増収増益を実現した例としては、ニトリのビジネスモデル|36期増収増益を生んだ垂直統合が参考になります。
経営者が「売上より粗利を追う」べき理由
売上は見栄えのする数字ですが、売上が10%伸びても粗利が増えなければ、増えた仕事量を人件費と仕入でそのまま食いつぶして終わります。中小企業の経営において「売上目標」ではなく「粗利目標」で動く意味は、ここにあります。
経営者インタビューを重ねてきたなかでも、好業績を続けている会社ほど、朝礼や月次会議で売上ではなく粗利の数字を社内で共有している傾向が見られます。
値引きが利益率に与える「見た目以上」のインパクト
粗利率20%の商品を10%値引きすると、粗利は半分になります。「たった10%」の値引きが粗利を半減させる——これが粗利率の低い業種で値引きが致命的に効く理由です。
一方、粗利率60%の商品を10%値引きした場合、粗利は約17%減にとどまります。同じ「10%引き」でも、粗利率の水準によって会社に与えるダメージは3〜4倍違う、という事実を社内で共有しておくと、現場の値引き判断が変わります。
売上10%増と粗利率1%改善はどちらが効くか
結論は会社の規模と利益水準によりますが、営業利益ベースで考えると「粗利率1%改善」のほうが効くケースは珍しくありません。売上10%増は仕入・人件費・物流費などの変動費も比例増するため、営業利益への寄与は販管費の固定費効果に依存します。
一方、粗利率を1%改善できれば、販売数量が変わらなくても粗利はそのまま1%分増え、販管費も増えないため、丸ごと営業利益になります。「売上を10%増やすのが先か、粗利率を1%改善するのが先か」は、来期の方針を決める前に必ず試算してみる価値があります。
粗利率を社内の共通言語にする
脱・税理士スガワラくんの動画「経営者が知っておくべき利益の種類」(YouTube・64万回視聴)では、経営判断と改善は「利益の種類を社内で揃える」ところから始まる、と繰り返し語られています。
実務上は、朝礼や月次会議で売上の次に粗利率を読み上げる習慣を1〜2ヶ月続けるだけで、現場の意識が変わります。「売上は上がったが粗利率が下がっている」ような状況に、経営者が気づく前に現場が先に声を上げるようになるのが理想です。
値引き10%のインパクト|粗利率水準で3〜4倍変わる
同じ「10%引き」でも、元の粗利率で粗利の減り方は大きく違う
粗利率20%の商品を10%値引き
−50%
粗利が半分に消える
粗利率40%の商品を10%値引き
−25%
粗利が1/4失われる
粗利率60%の商品を10%値引き
−17%
それでも粗利の1/6が消える
※ 計算:値引き額 ÷ 元の粗利 で算出。元粗利が薄い商品ほど、値引きの打撃が大きい。
利益率を経営判断に落とし込む3つの場面
計算式を覚えるだけでは経営は変わりません。コントリが取材してきた中小企業経営者は、利益率を「値付け・撤退・採用」の3つの意思決定に紐づけて日常的に使っています。ここでは場面別に、実際にどの数字を見てどう判断するかを整理します。
値付けの場面|目標粗利率から逆算して見積もる
新商品や新サービスの値付けは、「競合がいくらだから」ではなく「目標粗利率から逆算」で決めると、値付けの迷いが減ります。目標粗利率40%・原価60円の商品なら、売価は60÷(1-0.4)=100円です。
トヨタ生産方式の実務家による解説動画「間違えやすい見積り計算!正しい利益の計算方法」(YouTube)でも、「原価に利益率をそのまま乗せる」計算で見積りが赤字になる例が繰り返し指摘されています。粗利率で管理するなら、売価は「原価÷(1-目標粗利率)」で算出するのが正解です。
撤退・継続の場面|商品別・顧客別の粗利率で切る
全社粗利率が10%の会社でも、商品別に分解すれば粗利率30%の商品と-5%の商品が混在していることは珍しくありません。顧客別も同じで、同じ商品でも大口客への値引き前提の売上は粗利率が沈んでいます。
撤退・継続の判断は、全社ではなく商品別・顧客別の粗利率で見てください。「売上に貢献しているから残しておきたい」顧客でも、粗利が赤字であれば、やればやるほど会社の体力を削っていることになります。
採用の場面|一人当たり粗利から人件費の上限を決める
人を1人採用するときの判断軸は、「売上をどれだけ伸ばせるか」ではなく「粗利をどれだけ生めるか」です。一人当たり粗利(粗利÷従業員数)が、その会社が人件費と販管費を賄うための原資になります。
目安として、一人当たり粗利の40〜50%が人件費の上限と考えると、固定費を膨らませすぎずに済みます。採用時に「売上10%増やす覚悟はあるけど、粗利率は維持する覚悟はあるか」を自問するだけで、採用判断の精度は変わります。
利益率の計算でよくある誤解と失敗
利益率は式がシンプルなぶん、分母・分子の置き方で簡単に数字がズレます。中小企業で実際に起きやすい誤りを、先回りで3つ押さえておきます。
「利益率30%」と「原価に30%乗せる」は違う
最も多い誤解がこれです。原価70円に30%乗せると売価は91円ですが、このときの粗利率は(91-70)÷91≒23%にしかなりません。粗利率30%を実現したいなら、原価70円に対する売価は70÷0.7=100円です。
SPI対策動画「損益算①」(YouTube)で解説されている「定価=原価+利益」の構造は、計算の型として優秀です。原価に対する掛け率と、売価に対する利益率は別物——この区別を社内で揃えると、見積ミスが減ります。
税込み・税抜きの混在で数%ズレる
消費税込み売上と税抜き原価を混ぜて利益率を計算すると、消費税率10%の場合、数%単位で粗利率が歪みます。会計上は「税抜き売上に対する税抜き原価」で統一するのが原則です。
飲食店や小売店で現場の売上日報が税込みで、仕入れ台帳が税抜きになっているケースはよく見かけます。両方を同じ土俵(税抜き)に揃えてから利益率を出すところから、まず始めてください。
期間ズレ(売上の計上月と原価の計上月)で粗利率が歪む
その月の売上に対して、その月に仕入れた分の原価を機械的にぶつけると、仕入月と販売月がずれる業態(受注生産・飲食店の仕込み・季節商品など)では粗利率が月によって異常値を出します。
月次で正確な粗利率を把握したいなら、期末在庫を把握し「期首在庫+当期仕入-期末在庫=売上原価」で計算する必要があります。少なくとも四半期に一度は棚卸しして、月次の粗利率を補正すると、意思決定の精度が上がります。
同じ「30%」でも結果は違う|値付けの基準で粗利が7円変わる
原価70円の商品を例に、原価掛け率と粗利率逆算の違いを並べて比較
結果の粗利率
約 23%
結果の粗利率
30%
※ 粗利率30%を実現するには「原価 ÷ (1 − 目標粗利率)」で逆算する。原価に目標粗利率をそのまま乗せる計算は、意図した粗利率より7ポイント低く着地する。
利益率を上げる4つの打ち手
利益率を改善する方法は、分子(利益)を増やすか分母(売上)の構成を変えるかの2方向に大別できます。中小企業で現実的に効果が出やすい順に、4つの打ち手を整理します。
値上げ(最も効くが最も怖い)
利益率改善の打ち手として、最も効くのは値上げです。1%の値上げがそのまま粗利率1%の改善になる、という意味で最も直接的に効きます。一方で、既存顧客からの反発が怖く、多くの中小企業経営者が最後に手を付ける打ち手でもあります。
値上げを進めるコツは「全商品一律」ではなく「相対的に値付けが安い商品に絞って先に動かす」こと。原価が上がっているのに売価を据え置きのままにしてきた商品から着手すると、顧客の納得感も得やすくなります。粗利率の高いPB戦略で過去最高益を更新している例としてワークマンのビジネスモデル|職人市場を軸に過去最高益も、値上げと商品ミックスの両立の参考になります。
商品ミックスの見直し(粗利率の高い商品比率を上げる)
商品別の粗利率を把握すると、「売上は小さいが粗利率が高い商品」と「売上は大きいが粗利率が低い商品」が見えてきます。前者の販売数量を増やし、後者の販売数量を抑える——これが商品ミックスの見直しです。
営業・接客・陳列・広告出稿のすべてを、粗利率の高い商品に寄せる発想。全体の売上が同じでも、ミックスが変われば粗利率は2〜3%単位で動きます。
仕入れ・外注費の見直し
分子を増やすのではなく、分母側(原価)を下げるアプローチです。仕入先の相見積り、仕入ロットの見直し、外注費の内製化・外注化の整理などが該当します。
値上げが「売価の勇気」なら、仕入れ見直しは「交渉の勇気」。長年の付き合いで価格が据え置きになっている仕入先がある場合、相場との乖離を客観的に把握してから話を切り出すと、関係性を壊さずに動かせることが多いものです。
固定費の見直しは最後に
人件費・家賃・リース料など、固定費の削減は利益率に直接効きますが、順序としては最後です。固定費を削って粗利率を上げても、本業の稼ぐ力そのものは変わりません。
むしろ「固定費を削らずに、売上と粗利率で稼いで賄える構造」を作るほうが、長期的な経営体力につながります。固定費の見直しは、売上・粗利率の改善を試みたあとに、構造的に合わないものだけを対象にするのが王道です。
よくある質問(FAQ)
Q. 利益率の計算式を一言で言うと? A. 「利益÷売上×100」です。ただし分子に置く「利益」が5種類(売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益)あるため、何を判断したいかによってどの利益を使うかを決める必要があります。
Q. 中小企業はどの利益率を見ればよいですか? A. 日々の経営判断では売上総利益率(粗利率)と営業利益率の2つで十分です。粗利率は商品・サービスの稼ぐ力、営業利益率は本業全体の収益力を示します。経常利益率と当期純利益率は、金融機関対応や税務の局面で使う指標です。
Q. 「粗利率30%」と「原価に30%乗せる(掛け率1.3)」はどう違いますか? A. まったく違います。原価70円に30%乗せると売価は91円ですが、このときの粗利率は約23%にとどまります。粗利率30%を実現したい場合、原価70円に対する売価は100円(70÷0.7)です。中小企業の値付けで最も多い誤解の一つで、見積ミスから赤字受注につながることがあります。
Q. 利益率は業種平均と比べればよいですか? A. 業種平均は「異常値ではないか」の確認用途に留め、改善の目標は自社の時系列比較で設定することを推奨します。同業でも立地・顧客層・商品構成で正常値は変わるため、他社平均を無理に追うと値下げ競争に巻き込まれやすくなります。
Q. 粗利率と営業利益率、どちらを優先して追えばいいですか? A. まずは粗利率を社内の共通言語にすることを推奨します。粗利率は商品・サービス単位で分解できるため、改善の打ち手を考えやすい指標です。粗利率が安定した段階で、販管費のコントロールを含めた営業利益率に視点を広げると、改善の順序として自然になります。
Q. 利益率が低い月があったとき、まず何を確認すべきですか? A. ①値引きが増えていないか(値引き管理表)、②粗利率の低い商品の販売比率が上がっていないか(商品ミックス)、③特定の顧客への大口受注で粗利が沈んでいないか(顧客別粗利)、の3点を順に確認してください。全社の数字だけ見ていても原因は見えないので、分解して見えるようにすることが先決です。
編集部コメント
利益率の計算は式自体がシンプルなぶん、「わかっているつもり」で止まりやすい領域です。経営者インタビューを重ねるなかで印象的だったのは、好業績を続けている会社ほど、全社の粗利率を眺めるだけでは満足せず、商品別・顧客別・月別まで分解して現場と共有している、という共通点でした。
数字が見えると判断が早くなります。まずは自社の直近3期の売上総利益率と営業利益率を並べることから、始めてみてください。

