
シャトレーゼのビジネスモデル完全解説|なぜ安い?製造直販と広告費0円の秘密
「良いものを、手の届く価格で」——。多くの経営者が理想に掲げながら、現実にはなかなか両立できないテーマです。品質を上げれば価格は上がり、価格を下げれば品質が削られる。この当たり前のジレンマを、見事に乗り越えている会社があります。シャトレーゼです。
「おいしいのに、安い」。誰もが一度は感じるその不思議の裏には、緻密に設計されたビジネスモデルが隠れています。本記事では、シャトレーゼがなぜ安いのかを、製造直販・ファームファクトリー・広告戦略という視点から徹底解説。そして、中小企業が価格競争力を高めるために学べる本質まで掘り下げていきます。
シャトレーゼのビジネスモデルとは?なぜ安いのか、まず結論
はじめに結論からお伝えします。シャトレーゼが「おいしいのに安い」を実現できるのは、「契約農家から素材を直接仕入れ、自社工場で作り、自社の店舗で売る」という製造直販(SPA)の仕組みを、徹底しているからです。
仕入れ・製造・販売のあいだに入る中間業者をなくし、そこで生まれるムダなコストを、ぜんぶ価格と品質に還元する。さらに、テレビCMのような大きな広告費もかけない。こうした積み重ねが、あの価格を可能にしています。
つまりシャトレーゼの強さは、「安く売っていること」ではなく、「安く良いものを作れる仕組み」そのものにあります。本記事では、シャトレーゼとは何かを押さえたうえで、なぜ安いのかの3つの理由、独特のフランチャイズの仕組み、強みと将来性へと進み、最後に「中小企業が活かせる5つの本質」と「よくある質問」で締めくくります。
シャトレーゼとは|製造直販にこだわる菓子チェーン
戦略を読み解く前に、まずシャトレーゼがどんな会社かを押さえておきましょう。
山梨発、「ファーム」と「ファクトリー」をつなぐ会社
シャトレーゼの歴史は、1954年、創業者の齊藤寛氏らが甲府市のオリオン通りに開いた、今川焼き風の菓子店「甘太郎」から始まります。その後1964年、故郷の勝沼(現・甲州市)でアイスクリーム製造の「大和アイス」を設立し、菓子メーカーへと成長していきました。
いまや本社を山梨県笛吹市に置き、洋菓子・和菓子・アイスクリーム、近年ではパンやワインまで、約400種類もの商品を手がける製造小売チェーンへと発展。南アルプスの伏流水(名水)が湧く白州など、山梨の豊かな自然環境を活かした、こだわりのものづくりが特徴です。
その根幹にあるのが、「ファームファクトリー」という考え方。契約農家(ファーム)と自社工場(ファクトリー)を直接つなぎ、新鮮な素材を最短距離でお菓子に変える仕組みです。この発想が、シャトレーゼのすべての強さの源になっています。
数字で見るシャトレーゼの現在地
その勢いは、業績にもはっきりと表れています。
| 指標(シャトレーゼHD) | 数値 | 読みどころ |
|---|---|---|
| 連結売上高 | 1,613億円(2025年3月期) | 長年の連続増収 |
| 国内店舗数 | 約640店→約830店(2022→2024年) | 拡大を継続 |
| 海外店舗数 | 約160店 | アジアを中心に展開 |
※出典:シャトレーゼホールディングス公表値・各種報道(2024〜2025年)
スイーツ市場が横ばいと言われるなかでの、この継続的な成長。その理由を、次に詳しく見ていきましょう。
シャトレーゼはなぜ安い?3つの理由
「おいしいのに安い」の秘密を、3つの理由に分けて解説します。
シャトレーゼが「おいしいのに安い」3つの理由
契約農家から直接仕入れ
中間流通をカット
浮いた費用を品質と価格へ
3つの工夫の積み重ねが、品質を保ちながらの低価格を実現している
理由①:ファームファクトリー(契約農家から直接仕入れ)
最大の理由が、冒頭でも触れたファームファクトリーです。卵、牛乳、果物といった素材の多くを、近隣の契約農家から直接仕入れます。
市場や卸を通さず、農家から工場へ「直送」する。これにより、仕入れコストを抑えながら、とびきり新鮮な素材を使えるという、安さと品質の両立が実現します。素材の鮮度が高いからこそ、余計な添加物に頼らず、おいしさを保てるのです。
ファームファクトリー|中間流通をなくす製造直販
卵・牛乳・果物
できたてを製造
お客様へ直接
市場・卸・問屋といった「中間コスト」が発生しない
理由②:製造直販(SPA)で中間コストをカット
シャトレーゼは、自社で作ったお菓子を、自社の店舗で売る製造直販(SPA=製造小売業)を貫いています。
通常、メーカーが作ったお菓子は、問屋や小売店を経由して消費者に届きます。その各段階でコストが上乗せされる。シャトレーゼはこの流通の中間を自社で担うことで、上乗せされるはずだったコストを、価格の安さに変えているのです。同じ製造直販で価格決定力を握る事例は、関連記事「無印良品のビジネスモデルを徹底解説|ノーブランド戦略とSPAで稼ぐ仕組み」もあわせてご覧ください。
理由③:広告費をかけない
シャトレーゼは、大規模なテレビCMをほとんど打ちません。その分の費用を、商品の品質や価格に回しています。
では、どうやって知ってもらうのか。答えは、「おいしくて安い」という商品体験そのものです。一度食べて驚いた人が、家族や友人に伝える。この口コミの連鎖が、広告に代わる最強の宣伝になっています。
シャトレーゼのフランチャイズの仕組み|ロイヤリティ0円
ロイヤリティを取らない珍しい方式
シャトレーゼの店舗の多くは、フランチャイズ(加盟店)によって運営されています。ここにも、独特の工夫があります。
一般的なフランチャイズでは、加盟店が本部に「ロイヤリティ」を支払います。ところがシャトレーゼは、フランチャイズ店のオーナーからロイヤリティを一切受け取らないという、極めて珍しい方式をとっています。
本部と加盟店が「一緒に売る」関係
本部の利益は、加盟店に商品を卸すことで得る仕組み。だからこそ、加盟店が商品をたくさん売ってくれることが、本部の利益に直結する。本部と加盟店が「一緒に売る」関係になり、双方が成長できる構造です。ロイヤリティの負担がない分、オーナーは価格や経営に集中しやすくなります。
シャトレーゼの強みと将来性
これらの仕組みが組み合わさり、シャトレーゼは独自の強みを築いています。
連続増収と海外展開が示す将来性
シャトレーゼは長年にわたり連続増収を続け、近年は海外にも約160店を展開しています。「おいしくて安い」という価値は、国境を越えても通用する普遍的な強み。日本で磨いた製造直販モデルを武器に、さらなる成長が期待されています。
郊外立地という「逆転の発想」
シャトレーゼの多くの店舗は、家賃の高い都心ではなく、郊外のロードサイドに位置します。これは、固定費を抑えながら、地域の家族客に愛されるという戦略です。大手が見落としがちな立地を、あえて強みに変える。この「逆転の発想」も、シャトレーゼらしさの一つです。
中小企業がシャトレーゼから学べる、5つの経営の本質
ここまで見てきたシャトレーゼのビジネスモデルを、中小企業の現場に落とし込むと、次の5つの本質に集約できます。
まず押さえたい3つの本質
- 中間コストを見直す:仕入れや流通の「あいだ」に、削れるムダがないかを問い直す
- 品質と価格を両立させる仕組みを作る:安さを「我慢」ではなく「仕組み」で実現する
- 広告に頼らず、商品体験で広げる:思わず人に伝えたくなる商品が、最強の宣伝になる
さらに成果を伸ばす2つの本質
- パートナーと利害を一致させる:取引先や加盟者と「一緒に売る」関係を築く
- 大手の盲点を強みに変える:大手が避ける立地・市場に、あえて勝機を見出す
どれも、巨大資本がなければできないことではありません。「安さを、根性ではなく仕組みで実現する」——この視点こそ、価格競争に悩む中小企業が、シャトレーゼから受け取れる最大のヒントです。
シャトレーゼのビジネスモデルに関するよくある質問
最後に、シャトレーゼについてよく寄せられる疑問にお答えします。
Q. シャトレーゼはなぜ安いのですか?
主な理由は3つです。①契約農家から素材を直接仕入れる「ファームファクトリー」、②自社で作り自社で売る製造直販(SPA)による中間コストの削減、③大規模な広告費をかけないこと。これらにより、品質を保ちながら低価格を実現しています。
Q. ファームファクトリーとは何ですか?
契約農家(ファーム)と自社工場(ファクトリー)を直接つなぎ、卵・牛乳・果物などの素材を市場や卸を通さずに仕入れる仕組みです。仕入れコストを抑えつつ、新鮮な素材を使えるため、「安さ」と「おいしさ」を両立できます。
Q. シャトレーゼはフランチャイズですか?
はい、多くの店舗がフランチャイズ(加盟店)で運営されています。ただし、フランチャイズ店のオーナーからロイヤリティを一切受け取らないという、珍しい方式をとっています。本部は商品を卸すことで利益を得る仕組みです。
Q. シャトレーゼの将来性は?
長年の連続増収に加え、近年は海外にも約160店を展開しており、成長は続いています。「おいしくて安い」という価値は国境を越えても通用するため、製造直販モデルを武器に、今後のさらなる拡大が期待されています。
まとめ
シャトレーゼのビジネスモデルは、「契約農家から直接仕入れ、自社で作り、自社で売る」製造直販(SPA)を軸に、ファームファクトリー・中間コストの削減・広告費の抑制によって「おいしいのに安い」を実現する仕組みです。売上高1,613億円・連続増収という実績は、安さを根性で押し通したのではなく、安く良いものを作れる「仕組み」を築いた結果でした。
シャトレーゼが教えてくれるのは、価格競争を「我慢比べ」にしないことの大切さです。御社の事業には、見直せる中間コストや、商品そのもので広がる魅力が眠っていないでしょうか。安さを仕組みに変えるその一歩を、できることから始めていく——その挑戦を、心から応援しています。

